大野、樋坂らが提唱するCR-IR法に基づいて、CYPの関与する薬物相互作用をAUCの変化率として定量化します。
チトクローム P450(CYP)3A4 は、ヒトの肝臓で最も一般的な代謝酵素であり、臨床的に重要な問題となる様々な薬物相互作用の標的でもある。
CYP3A4が関与する薬物相互作用に関する多くの報告があるにもかかわらず対象薬剤が多数存在するため、すべての潜在的な相互作用を推定することは困難を極める。
そのため、CYP3A4を介した薬物相互作用を予測するための包括的なフレームワークが臨床上重要であると考えられている。
大野らによって1983年から2006年の間に78の論文で報告された113の薬物相互作用試験に基づいて解析が行われ、
薬剤名、用量、血中濃度曲線下面積(AUC)の増加に関する情報が収集された。1)
そこから下記の推定式を用いて、対象薬物についてそれぞれ固有のパラメータが算出されている。
この方法を用いることで、これらの基質および阻害剤との相互作用によるAUC上昇率の予測が可能という仮説を検証するために、60件の追加試験を行いAUC上昇率が分析された。
この結果、上昇率が67~150%の範囲に83%(50件)、50~200%の範囲に95%(57件)で予測することに成功している。
また当時、in vivoにおけるCYP3A4の阻害強度を評価するために最も信頼性の高い標準基質はミダゾラムであると考えられていたが、
この解析では、シンバスタチン、ロバスタチン、ブスピロンが代替薬として使用できることが示唆された。
加えて寄与率を評価するためには、ケトコナゾールまたはイトラコナゾールが標準的な阻害剤とされた。
このような背景から構築されたフレームワークはCR-IR法と名付けられた。CR-IR法はCYP3A4阻害作用のみならず
代謝誘導作用やCYP2C9、CYP2D6など他の分子種が引き起こす薬物相互作用にも応用可能であることが示唆されている。2)
薬剤固有の寄与率 Contribution ratio:CR、阻害率 Inhibition ratio:IR、誘導率 Increase in clearance:CIをパラメータとして参考書籍3、4)から引用